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活動報告

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高校生理科教室「コミュニケーションする脳!?」参加報告(2011.08.19開催)

高校生理科教室「コミュニケーションする脳!?」参加報告
C01K8 長坂泰勇((独)理化学研究所 脳科学総合研究センター 適応知性研究チーム)

去る2011年8月19日、(独)理化学研究所・脳科学総合研究センターにおいて、高校生理科教室「コミュニケーションする脳!?」が開催されました。朝からの豪雨にもかかわらず、30人以上の高校生(と引率の先生方)が一日研究員として本領域の研究の一端を体験しました。ここでは講師の一人として、その様子を簡単にご報告いたします。
はじめに領域代表の津田一郎先生から本領域の紹介と今回の理科教室の趣旨である「体験を通して得られる問いの重要性」についてお話をいただきました。引き続き、山口陽子先生によるレクチャー「脳とリズムについて」が開かれました。このレクチャーでは参加者との対話を絡ませながら、私たちの普段のコミュニケーションを支える脳活動の一つ「リズムの同期」について、参加者の理解を深めました。多少難しい内容も含まれていましたが、高校生のみなさんは積極的に意見を出し、大変熱心に聴講していました。

その後、5つの班に分かれて体験学習を行いました。5つの班にはそれぞれ、北城圭一講師による「リズム現象をつくる」、川崎真弘講師による「ヒトの脳波リズムの同期現象」、橋本敬講師による「新しい言語をつくってコミュニケーション」、大森隆司講師による「ヒトらしさを感じるロボット」、そして私が担当した「ヒトの無意識的な同期現象」というテーマが設定されていました。ほとんどのテーマは本領域で各講師が実際に日々研究している内容で、高校生に実際の研究・実験現場をじかに触れてもらうよい機会となりました。たとえば私が担当した「ヒトの無意識的な同期現象」では、向い合って座っている2人の高校生に、各人の前方に置いてある2つのボタンを交互に押してもらう課題を体験してもらいました。ここでは2人のボタン押しのタイミングや腕の動きが徐々に同期していく現象を観察しました。また対面者の組み合わせや、相手の観察条件を変化させることによって、同期現象の変化を確認しました。さらにこちらで準備した実験条件以外にも、参加者自身が考案した新しい条件を設定し、2人の腕の動作はどのように変化していくのか?なぜ人は同期するのか?といった、高校生自身から発せられる問いについて議論を深めました。私の予想を超えた大変熱のこもった体験学習となり、2時間の体験時間はあっという間に過ぎていました。なお別の実験班の講師からも、高校生がそれぞれに創意工夫しながら自主的に体験学習を進め、さまざまな問いを投げかけていたと報告があり、体験学習は講師陣の想像を超えた成果を収めたと思っています。

体験学習のあとに再び参加者全員が集合して、各班の代表者が講師と共に体験学習の概要や研究の意義、実験の結果を報告しました。各代表者は講師の助けをほとんど借りることなく、難しい内容をやさしくまとめて参加者全員に報告していました。短い時間であったにもかかわらず私たちの研究をきちんと理解したその理解力に驚くと共に、自身の研究を通してそのような高校生たちと交流を深められたことに大変なよろこびを感じています。また閉会後も講師に質問する高校生や、講師や実験助手と談笑している高校生の様子が会場のあちらこちらで見受けられ、参加者の皆さんがこの会に満足してくれたことを実感することができました。なお参加者全員から感想等をもとめるアンケートを行いましたので、結果がまとまり次第、本領域webページやニュースレター等でご報告しようと思います。

今回は短い時間での体験学習だったため、各テーマをより深く掘り下げるまでには至りませんでしたし、また体験報告に十分な時間が取れず、各班の研究の面白さを別の班の皆さんに十分伝えられなかった可能性もあります。これらは次回への反省点として活かしていきたいと思います。

最後に、この理科教室の開催を円滑に進めるために実験助手のみなさん、理研脳センターや領域事務の職員の方々にたいへんご尽力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。