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活動報告

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高校生体験理科教室「見て触れて感じる先端科学 脳と量子とエネルギー」開催報告(2013.08.23開催)

高校生体験理科教室「見て触れて感じる先端科学 脳と量子とエネルギー」開催報告
蓬田幸人(玉川大学 脳科学研究所)

去る2013年8月23日、玉川大学において高校生体験理科教室「見て触れて感じる先端科学 脳と量子とエネルギー」が開催されました。当理科教室は玉川大学工学部・工学研究科・脳科学研究所・学術研究所・量子情報科学研究所、文部科学省科研費補助金 新学術領域研究「ヘテロ複雑系システムによるコミュニケーション理解のための神経機構の解明」、文部科学省科研費補助金 新学術領域研究「予測と意思決定の脳内計算機構の解明による人間理解と応用」、脳の世紀実行委員会の主催にて行われました。当日は30名を超える高校生が参加し、最先端の研究内容に自ら触れるという体験をしました。

初めに、主催挨拶として津田一郎先生(北海道大学)と坂上雅道先生(玉川大学)より、それぞれ今回の体験理科教室を開催にあたって参加する高校生達へのメッセージをいただき、大森隆司先生(玉川大学)より全体の流れに関する説明と講師の紹介をいただきました。会場に集まった高校生達は皆とても真剣な面持ちで耳を傾けており、彼らのやる気がこちらにも伝わってきました。

その後、7つのコースに分かれて体験学習を行いました。各コースはそれぞれ、1. 鮫島和行講師による「決断とかけひきの科学<意思決定・神経経済学>」、2. 私の担当した「脳のつながりを探る<MRIによる神経線維追跡>」、3. 井出吉紀講師による「脳に記憶を書き込もう<神経生理・海馬の記憶>」、4. 岡田浩之講師による「目は口ほどにものを言う<眼球計測からわかる心の動き>」、5. 高岸治人講師による「あなたは人間関係に疲れていませんか?<唾液から調べる社会的ストレス>」、6. 松下将講師による「氷のつくる神秘の世界<極低温が作り出す非日常現象>」、7. 小原宏之・小島比呂志両講師による「光のちから<光エネルギーの変換と利用>」という7つのテーマで行われました。どのコースでも、それぞれの分野で実際に最先端の研究に使われている装置や手法が扱われ、高校生にとってはおそらく初めて実際の科学研究の現場に触れるよい経験になったのではないでしょうか。

私の担当したコース2では、6人の高校生にMRIの拡散テンソル画像を用いた神経線維の追跡を体験してもらいました。最初に玉川大学脳科学研究所GBI棟の2階にて松元健二先生(玉川大学)より脳の解剖構造についてのレクチャーをしていただきました。生徒達は脳の解剖模型やMRIの構造画像のビュワー等に触りながら真剣に耳を傾けていました。その後、GBI棟1階のMRI室に全員で移動し、MRI装置の説明をして実際にMRIで脳の構造画像を撮影する様子を見学してもらいました。その後は、いざ本番ということで拡散テンソル画像を用いて脳内の神経連絡を追跡する体験を一人一人交替でしてもらいました。まずは「脳梁」や「錐体路」という課題を設定し、脳の左右半球間をつなぐルートや、大脳皮質から脊髄に到るルートなどを画面上に三次元的に描出してもらいました。生徒達は初めて触れる解析ソフトウェアにも動じることなく、自分が描出した構造について「どんな機能的な意味があるのか?」「この先はどこに繋がっているのか?」など積極的に質問をしながら熱心に課題に取り組んでいました。各生徒に自由な起点から神経連絡を追跡してもらったところで約2時間半の体験学習が終了しましたが、その間も生徒からはMRIや拡散テンソル画像の原理について、果ては脳科学の研究者になるにはどういう道があるのかといったことまで様々な質問が出て盛り上がり、脳科学に関心を持ってもらうよい機会になったのではと感じました。

体験学習後は再び参加者全員が集まり、各コースの代表者1~2名から自分達の参加した研究の概要や実験結果について数分程度のプレゼンという形での報告がありました。各コースの代表者はそれぞれ自分の言葉で、参加した実験の内容やその結果等についてしっかりと説明していました。限られた時間の体験学習の中でも、生徒達は全員が存分に知識を吸収出来ていたのだなという手ごたえが感じられた瞬間でした。

今回の体験教室では終始、参加した高校生の意欲・関心の高さが印象に残りました。高校生の内に最先端の研究内容に触れる機会を設けることは、科学研究への理解・関心を高めてもらうという点で非常に有意義であり、また将来の研究者育成にもつながるよい方法なのではないかと感じました。

最後になりますが、今回の体験理科教室開催にあたり各領域の先生方、実験助手の皆様、玉川大学学術研究所及び領域事務の方々には大変ご尽力を頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。