研究組織
A01 数理システム論(数理システム班)
研究項目A01 では、拡張された力学系、非線形偏微分方程式、ハイブリッド系、進化ダイナミクスなどに着目し、コミュニケーションに伴う脳内ダイナミクスを解析する。
G1班
研究課題名 |
動的脳の情報創成とカオス的遍歴の役割 |
研究の目的 |
近年の計測技術の進歩によって脳神経系のダイナミックな活動状態が観測されるようになり、本計画研究の代表者がカオス力学系に基づいて予測し提案してきた脳活動と機能の関係が実証される機運が高まってきた。実際、アトラクターダイナミックスおよび疑似アトラクター間の遷移現象は海馬CA1、CA3 や嗅球、嗅皮質において神経活動として存在することが実証された。また最近の実験事実は脳の情報処理が単に入力刺激によって駆動されるのではなくトップダウン情報のダイナミクスによって入力が選択される過程であることを強く示唆しており、代表者がカオス的遍歴として研究してきた力学系の状態によって説明可能であると期待されている。また代表者らは海馬CA3活動はカオス的遍歴的による動的連想記憶を担い、CA1活動はカントール集合による情報表現を担っているという仮説を提唱し、CA1に関しては玉川大学との共同研究によってほぼ実証された。このような研究動向から、本計画研究では、動的な脳の情報創成におけるカオス的遍歴の役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、CA3型の連想記憶ネットワークやその他さまざまな型のネットワークの活動とアセチルコリン系によるトップダウン情報の引き込み協調への関わりを明らかにすることを目的とする。これによりコミュニケーションにおける脳内トップダウン情報の役割に関するダイナミクスを調べる。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
津田一郎 |
北海道大学 |
複雑系数理学 |
計画の統括遂行 |
研究分担者 |
藤井 宏 |
京都産業大学 |
認知神経情報科学 |
神経数理解析 |
高橋陽一郎 |
東京大学 |
確率解析・力学系 |
数理解析 |
連携研究者 |
青柳富誌生 |
京都大学 |
非線形物理学、理論神経科学 |
非線形解析 |
山口 裕 |
北海道大学 |
計算論的神経科学 |
数値解析 |
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G2班
研究課題名 |
ヘテロな動的パターンの相互作用の数理的解明とその生命科学への展開 |
研究の目的 |
コミュニケーションを相互作用による情報の交換ならびにその交換を通しての自分と相手へのフィードバックダイナミクスと捉える。そのためにはコミュニケーション主体としての個(individual)とよべる形での存在、コミュニケーション手段を持つこと、そしてフィードバックを通しての変化が生じるための豊かな内部ダイナミクスをもたねばならない。そのような典型例の一つとして散逸系における粒子解ダイナミクスがある。空間的に局在することで「個」として認識され、自走し、衝突することでコミュニケーションを行い、さらに局在解として多彩な内部ダイナミクスを有する。本研究においては、ヘテロな個体間の相互作用ダイナミクス、多体衝突、そして集団ダイナミクスを組織的に研究する。さらにそれらが伝搬する場の環境とのコミュニケーションにより、システムレベルでどのような遷移が起こるのか、またそれらの間のフィードバック結合から形成される大域的なヘテロクリニック構造の数理的機構を明らかにする。システムとしての脳は複数の内部状態をもつ準安定な系であることを考慮すれば、そのような脳をもつ個体が社会的な文脈の中で、役割分担や協調行動を伴いつつ、新たな関係性の創発するダイナミクスの本質の一部は上の数理的機構により解釈可能であることを示す。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
西浦廉政 |
東北大学 |
非線形解析 |
数理解析 |
研究分担者 |
國府寛司 |
京都大学 |
力学系理論 |
力学系解析 |
上田肇一 |
富山大学 |
分岐現象の数値実験 |
大域的計算理論の構築 |
連携研究者 |
荒井 迅 |
北海道大学 |
力学系 |
数値的分岐解析 |
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G3班
研究課題名 |
多時間スケールダイナミクスによるメタルール生成とそれに基づく学習、進化の理論 |
研究の目的 |
生命システムは、多くの異なる時間スケールを持った素子からなり、その発展を通して、自らの発展を規定するルールがシステムの中から生成されている。一方で、システムの時間発展を調べるためには、発展規則を前もってあたえておくことが必要であるので、発展規則自体がいかにつくられ発展していくかは昔からの難問である。規則が内側から生成されるためには、要素からなるシステムの中から、他を制御する「ルール」とみなせる部分が形成されなければならない。このための原理を、異なる時間スケールを持った神経素子や適応素子結合系の数値計算、その結果の理論的表現によって明らかにする。具体的には、素子の時間スケールの干渉を通し、素子間の関係が変化することで、元来あった規則が自ら塗り替わり、新規規則の形成が可能になることを示す。それにより、認知過程、伝達創成の数理的基盤を提供する。この研究を通して、ヘテロでダイナミックな素子集団から、環境の変化に対して柔軟に適応し安定した機能が生まれることを示し、生命システムのみたす特性の基盤を明らかにする。これまでに申請者はカオス結合系の集団運動やカオス的遍歴を見出して、大自由度力学系の普遍的性質を見出してきた。一方で、細胞生物学者と協働して、複製、適応、進化、細胞分化の普遍的論理を確率過程と力学系の視点から抽出してきた。これらの研究を基盤として、一方では時間スケールの異なる結合系の研究を行い、他方、それをふまえて、力学系のルールを変えるシステムとしての認知、学習、記憶、適応、進化の数理的枠組みを構築する。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
金子邦彦 |
東京大学 |
複雑系物理 |
力学系による理論化、モデル化と計算機実験 |
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