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研究組織

公募(平成22-23年度)B01班

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公募(平成22-23年度) B01ヘテロ脳内システム間相互作用(脳システム班)

K1班

研究課題名
霊長類前頭前野におけるマルチシステムとしての情報処理機構
研究の目的
脳の最高位中枢である前頭前野は機能的に異なる複数の領域より成り立っている。しかし、全体としては、統合的にいわゆる中央執行機能に関わるが、なぜこのような異なるシステムが集まって統合機能を営めるかは不明である。最近、Koechlinによって前頭前野における階層性について論じた情報処理に関しての興味深い仮説が提唱されており、前頭前野を後方部から前方部に沿ってのそれぞれの部位を階層性に順序付けられた実行システムとして捉えられている。しかし、このような階層性モデルには検証すべき点が多々ある。
実生活において、進行中の複数課題の状況が逐次把握され制御・調節、すなわち最適処理されている。申請者らは、脳機能を複数の機能を持つ複数のマルチシステムと捉えて、このような複数の同時並列処理に関わる新しい脳の動作原理を解明することを目標とする。この研究では、現在認知行動課題訓練中のサルを用いて、並列複数課題遂行時 VS. 単一課題遂行時の前頭前野前方部、さらに前頭前野中央部から後方部および内側前頭前野などの複数領域、さらにその領域内の異なる機能にかかわる細胞活動を同時に記録し解析する。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 嶋 啓節 東北大学 システム大脳生理学 研究計画全体の遂行
連携研究者 中島 敏 東北大学 システム大脳生理学 動物認知課題の学習訓練、細胞活動の記録と分析、モデルの作成

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K2班

研究課題名
行動指令の動的生成機構としての前頭葉興奮性・抑制性神経細胞の機能分化と相互作用
研究の目的
環境や他者といかに調和的な関係を築くかは、脳の情報処理に課せられた大きな役割の一つである。環境や他者はしばしば複雑で予測不可能な振る舞いをするため、それらに対応するためには、脳の情報処理も複雑で動的でなければならない。本研究では、複雑な行動指令生成過程全般の背後にある神経機構を解明するため、本研究では、前頭葉運動関連諸領野の神経活動を興奮性細胞と抑制性細胞とに分類し、性質の差異と相互作用を解析する。特に、行動指令生成過程が一種のアトラクタ・ダイナミクスであることを明らかにするために複雑系のデータ解析法を多元的に使用する。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 坂本一寛 東北大学 計算論的神経科学、神経生理 研究全般の計画と遂行
連携研究者 虫明 元 東北大学 神経生理 助言

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K3班

研究課題名
アダルトニューロジェネシスによるヘテロ脳回路の動的アセンブル
研究の目的
大人でも、海馬では、新しくニューロンが生まれ、新しく回路ができていることがわかってきた。この新しい回路は、自己組織的に、既存回路に組み込まれる。また、既存回路の活動は、ニューロン新生の過程を、フィードバック的に制御している。最も大事なことは、この新生ニューロンが、空間記憶に関する学習に関わっていることである。本研究では、この空間学習に関する新生ニューロン回路のダイナミクスを抽出し、回路アセンブルに関してのモデル化を試みる。申請者は、基盤研究や特定領域研究において、海馬の活動により、ニューロン新生が誘導されることを発見し( Neuron, 47: 803-815 (2005))、アセチルコリン神経系が新生ニューロンに直接影響を及ぼしていることを見出した(Eur. J. Neuroscience, 28, 2381-2392 (2008))。そして、分化間もない新生ニューロン(分化一週間以内)であっても、GABA神経系やアセチルコリン神経系から神経入力を受け取り、 GABA神経系やグルタミン酸ニューロンに神経出力することがわかってきた。この自己組織化による局所回路が、海馬回路、さらには脳全体に広がるヘテロ脳回路システム(中隔野、帯状回、前頭葉、脳内アミンシステム)に影響を及ぼしていることが推定された。本研究では、自立的な新生ニューロン回路が、どのような仕組みによってヘテロ脳回路の中にアセンブルされていくか、そしてこの回路が如何にして空間学習の実行に必須の役割を果たしているかについて、生理的データを収集し、コミュニケーションのモデル化につなげる。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 久恒辰博 東京大学  -  研究全般
連携研究者 井ノ口馨 富山大学  -   - 

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K4班

研究課題名
樹状突起における脳内へテロ情報の統合メカニズムの解明
研究の目的
近年の生理実験により、樹状突起が、これまで考えられてきた以上に多彩な情報処理を担うことが示され、実験生理学者の間で注目を集めている。海馬CA1錐体細胞では、樹状突起上の応答特性を定める膜特性の一つである膜抵抗が空間的に区画化されており、この膜抵抗の区画化が、樹状突起に投射する異なる入力情報の区画化と対応することが強く示唆されている。従って、脳における異なる入力情報の統合様式に、樹状突起膜特性のヘテロ性が強く影響を及ぼしている可能性が非常に高い。しかしながら、その重要性にも関わらず、樹状突起における入力情報のヘテロ性と樹状突起膜特性とのヘテロ性の間の関係は明らかにされていない。更に、直接測定の困難性により、膜特性が樹状突起上でどのように分布しているかも、依然、不明のままである。
本研究では、樹状突起上の情報統合に注目することにより、入力情報におけるヘテロ性と樹状突起膜特性が示すヘテロ性がどのように相互作用するかを理論的に明らかにする。実験データを元に、樹状突起上の膜特性分布を推定する統計学的手法を構築し、ヘテロ情報が樹状突起においてどのように統合されるかを理論解析により究明する。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 大森敏明 東京大学 理論神経科学 研究の総括、統計的推定法の構築、数理モデルの理論解析
連携研究者 岡田真人 東京大学 理論神経科学 共同して理論研究を行う

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K5班

研究課題名
神経回路網におけるカオスに基いた脳内通信の原型モデル
研究の目的
脳機能や生体の卓越した機能性のメカニズム解明研究について、本公募の科研費・新学術領域研究の当該領域提案はその大きな柱となる研究領域である。申請者らは同様な立場に基づいて、神経回路網モデルにおけるカオスの機能的な側面とその分析や不良設定問題の求解などの研究を積み上げて来ており、それをベースに新たにアイデア、特に「カオスを含む複雑なダイナミックスを通信媒体として用いた複数離点間同時多チャンネル通信の計算機実験とそれに基づく脳内コミュニケーション機能へのアプローチ、および脳機能型擬似神経デバイス(Brainmorphic Device)の試作と通信実験」を重要な目的とする。具体的には、(1)神経回路網のカオスを用いた多点間の同時多チャンネル情報伝達に関する(計算機)機能実験とその機能解明、(2)脳内においてメゾスコピックあるいはマクロスコピックな神経数を含む離野間周期的同時減少を模擬した計算機実験とその機構解明を基礎に、脳内コミュニケーション機能にアプローチ、(3)非線形光電子デバイスによる擬似神経回路網の試作とその評価およびそれを用いた離点間同時多チャンネル通信及び離点間同期現象の計算機実験、更にそれらに関する実際のハードウェア試作・動作実験実施とそれらの計算機実験との比較、の3目的課題を掲げる。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 奈良重俊 岡山大学 物理情報学・デバイス物理学 研究の総括,モデル構築,計算機実験

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K6班

研究課題名
蛍光イメージング法による鳥海馬神経回路解析
研究の目的
鳥海馬領域の包括的な機能解析を目指した研究を進める。鳥海馬領域は脳表に位置するため、電気生理実験の他に、invivoにおける神経活動をオプティカルイメージングにより計測することが可能である。また最近になって哺乳類脳と鳥脳との相同領域の研究が進んできている。具体的には下記のような項目について研究を行う。
  • 哺乳類海馬と比較可能な海馬神経構築とそのダイナミクスに関する知見を提供する。
  • 脳内神経投射および局所神経構築を包括的に調査するための新規な技術を提供する。
  • in vivoでの脳表イメージング技術による海馬脳機能について、定量データを提供する。
  • 数理モデルで解析可能な脳神経活動ダイナミクスに関する定量的データを提供する。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 岡 浩太郎 慶應義塾大学 生物物理学・神経情報学 研究統括と光計測・行動実験の実施

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K7班

研究課題名
情報探索と利用の神経機構 
研究の目的
意思決定時における情報および報酬の探索行動、およびその時の脳活動を解析することによって、情報の探索と利用の神経機構を明らかにすることを目的とする。複数の刺激のなかから意味のある情報を取り出す神経メカニズムを知ることは、コミュニケーションで重要になる伝達情報の受容や、他者の心的状態の推定などの神経基盤を探る上でも重要である。探索学習課題をヒトおよび動物に行わせた際の脳活動と意思決定から、学習時に情報探索と報酬最大化をどのようにバランスしているのかに対する計算論的モデルを構築する。計算モデルによって直接外界からは観測できない内部変数を推定し、それと神経活動との相関・回帰分析などを行うことで、脳内の推定機構をより定量的に理解することができる。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 鮫島和行 玉川大学 計算神経科学、神経生理学 研究の統括・実施

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K8班

研究課題名
大脳皮質局所神経回路の抑制性シナプスの機能的解析
研究の目的
大脳新皮質には、基本的な単位である局所神経回路が多数存在し、それらの活動が基となって、高次脳機能が具現する事がこれまでの研究で明らかである。その回路がどのような配線構造をとるのか、どのような動作原理で機能するのか、未だ理解されるには至っていない。本研究では、その構成要素の中の抑制性シナプスの機能に関する解析を行う。具体的には、錐体細胞に対するFSバスケット細胞の抑制性シナプスの位置やそのPSDの面積と、ターゲットの錐体細胞に起きるipsc電流の大きさとの相関を注意深く詳細に解析する。そして、その解析結果を基に、シミュレーション解析を加える事で、実際に皮質の抑制性シナプス機能にどのようなメカニズムが隠されているのかを解析したい。これまで、抑制性シナプスの機能に関しては、その詳細はまだよく知られていない。本研究は、抑制性シナプスの機能的な理解を飛躍的に進めるデータを提供できる物と考えている。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 窪田芳之 生理学研究所 神経科学、神経解剖学 組織作成・電子顕微鏡観察・データ解析及び研究の総括

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K9班

研究課題名
行動開始に伴う海馬と大脳皮質のマルチニューロン活動遷移
研究の目的
これまでに研究代表者は、頭部を拘束したラットに前肢の運動課題を効率よく訓練し、運動発現中に大脳皮質運動野の細胞活動をマルチユニット記録法や傍細胞記録法により詳細に解析して、皮質内回路における運動情報の処理過程を考証する独自の研究手法を開発した。本研究では、このように目的と意思をもった行動発現の際に、運動野だけではなく、大脳全体の活動状態を反映する海馬における神経細胞の集団活動の遷移状態をマルチユニット記録法により理解することを目指す。また、直接結合をもたない海馬と運動野の領域間に何らかの集団活動の相互作用がみられるかを調べる。さらに2光子レーザー顕微鏡やUVアンケージング技術をもちいて海馬の錐体細胞の信号処理機構も探る。本研究は生理学的実験を基盤として実施するが、ここで得られた実験結果は実験データベースとして規格統一して整備し、当該領域の理論系研究者の協力も得て高度な理論的解析を活かした共同研究が進むことも期待する。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 礒村宜和 玉川大学 神経生理学 本研究計画全体の遂行(実験動物の訓練、手術、記録、およびデータ解析など)主にラットの大脳皮質や海馬を対象としたインビボ実験を担当する。
連携研究者 福島康弘 川崎医療福祉大学 神経生理学 ラットの海馬を対象としたインビトロ実験を担当する。

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K10班

研究課題名
時系列信号によるコミュニケーションを司る神経情報表現の解明
研究の目的
小鳥の一種であるジュウシマツの脳には、さえずり(歌)の生成・学習・認知に特化して発達した神経回路が存在し、歌制御系と呼ばれている。中でも、HVC(皮質相同部位)、LMAN(皮質相同部位)、Area X(基底核相同部位)という神経核では特定の音要素系列に対して選択的に応答するニューロンが見つかっており、時系列情報処理を主に担っていると考えられている。一方、時系列情報をシステム全体へ埋め込む方法として、フラクタル集合をうまく利用したカントールコーディングという方法が理論家から提案され、注目を集めている。近年の研究において、海馬スライスに対して数種類の電気刺激を時系列的に行うことによりカントールコーディングが実験的に検証されたが、こうした実験はin vitroで行われており、生物学的に意味のある入力要素を用いていない点が問題とも言える。そこで本研究では、実際に生物学的に意味のある形で使われている歌の音要素からランダム系列入力を作成し、その聴覚刺激に対するネットワークレベルの神経応答をin vivoで測定し、カントールコーディングの観点から解析を行う。さらに、自由行動下で自然な求愛行動によるコミュニケーションをさせた際のオス・メス2羽のそれぞれの神経活動を多点同時記録する。オス側のニューロン活動とメス側のニューロン活動との間の相互相関解析を行い、コミュニケーションに伴う引き込み同調現象が見られるかどうか検討する。また、オス側のフラクタル集合とメス側のフラクタル集合を構成している各クラスターの対応関係を調べ、時系列信号の発信者であるオスの脳内表象と受信者であるメスの脳内表象との関係を明らかにすることで、時系列信号によるコミュニケーションを司る神経メカニズムの解明を目指す。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 西川 淳 北海道大学 神経生理学、神経情報学 研究の統括と実施

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