研究課題名 |
ラット海馬における「自己」と「他者」の空間表現のメカニズム |
研究の目的 |
ラット海馬における場所ニューロンは、ラット自身(自己)の実験環境内における空間認知(位置の認識)に用いられていると考えられており、認知地図仮説の神経科学的根拠となっている。しかしその認知地図が実世界の事象を完全に表現するためには、これらの場所ニューロンが同じ環境内を移動する「他者」の行動を観察した際にも同様の活動特性を示してしかるべきである。本研究は、他者の行動に対するラット海馬の場所ニューロンの活動特性を明らかにし、海馬領域の空間認知に関するミラーシステムとしての可能性を検討することを目的とする。
This project aims to investigate the spatial coding of self versus others in rat hippocampal circuits. Previous research has typically focused on the spatial mapping of the individual (“SELF”) relative to the world. However, if the cognitive map is truly a representation of the world, the neural mechanisms should work equally well in tracking the movements of others. We compare conditions in which the rat itself is moving in complex environments with conditions in which the rat observes another moving in the same environments. Essentially, we examine the equivalent of the mirror system for spatial mapping in rats, through multi-unit recording and recording of local field potentials, particularly in areas CA1 and CA3 of the hippocampus.
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
ローレンス・ヨハン |
九州大学 |
認知神経科学・行動解析 |
実験の総括・データ解析 |
連携研究者 |
高橋宗良 |
九州大学 |
行動神経科学 |
実験システムの開発・データ計測・解析 |
研究課題名 |
神経リズム中に誘導されるダイナミカルセルアセンブリの実験的検証 |
研究の目的 |
記憶が無いと相手の事も忘れてしまうのでヘテロ脳間コミュニケーションにとって記憶過程は重要な機能である。本研究はコミュニケーション神経情報学にとって必要なダイナミカルな記憶情報処理過程の解明を目的とする。以前に提案されたダイナミカルセルアセンブリ(DCA)は、記憶学習の脳内表象として時間構造を持つ。しかし、まだ実験的に証明されていない。脳内海馬では、記憶学習に関わっているθ波、β波などの脳波が観察されており、アセチルコリン作動薬を海馬スライスに投与するとβ波が誘導される。β波中には少数の神経細胞が同期発火し、その発火が伝搬しており、この事は、β波中、複数のDCA が生成している可能性を示唆している。また自発的に生成するDCAが外界刺激と連合して記憶表象となる可能性がある。本研究では、DCAを測定し、その性質を明らかにし、記憶表象との関係を明らかにする予定である。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
夏目季代久 |
九州工業大学 |
脳情報工学・脳神経科学 |
研究総括・研究立案・電気生理実験・データ解析 |
研究課題名 |
運動指令のトップダウン形成とボトムアップ形成を担う皮質回路機構 |
研究の目的 |
本研究では、外界刺激により誘発される外発性の運動指令の形成(ボトムアップ型)と自らのタイミングによる内発性の運動指令の形成(トップダウン型)のために、大脳皮質内の神経回路上のどの細胞からどの細胞へどのような機能的情報が流れるのかを、「外発性/内発性」運動課題を遂行するラットの運動野を対象に、傍細胞記録法による「ナノ刺激」とマルチニューロン記録法を組み合わせて追跡することを目指す。本研究は、基本的に生理学的実験を基盤として実施するが、ここで得られた実験結果は実験データベースとして規格統一して整備し、領域内の理論系研究者の協力も得て高度な理論的解析を活かした共同研究が進むことも期待する。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
礒村宜和 |
玉川大学 |
神経生理学 |
本研究計画全体の遂行(実験動物の訓練、手術、記録、およびデータ解析など)主にラットの大脳皮質や海馬を対象としたインビボ実験を担当する。 |
連携研究者 |
福島康弘 |
川崎医療福祉大学 |
神経生理学 |
ラットの海馬を対象としたインビトロ実験を担当する。 |
研究課題名 |
実環境におけるリスクと情報探索の神経機構 |
研究の目的 |
我々ヒトを含む動物のリスク回避と戦略的探索行動は、経験や状況に応じてどのように適応的に切り替えられているのだろうか?本提案では主に2つの方法で未知環境における意思決定と適応の原理を神経生理学的、行動学的、構成論的にアプローチする。1つは霊長類をつかった視覚刺激からの意思決定課題を用いて、複数の刺激属性の中から情報の探索を行わせる場面の意思決定のメカニズムを神経生理学的に明らかにする。2つめは、ヒトの行動を説明する計算モデルを構成し霊長類と相同な課題において非侵襲脳活動計測を行う事により、ヒトとヒト以外の霊長類の神経機構の共通性や相違を明らかにする。さらに実験室内での意思決定よりも現実に近い商品選択などの意思決定を調べることにより、ヒトや動物の脳活動・計算論的モデルによってマーケティング理論の神経科学的基礎を検討する。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
鮫島和行 |
玉川大学 |
計算論的神経科学・神経生理学 |
研究全体の統括・立案・実行 |
連携研究者 |
植田一博 |
東京大学 |
認知科学・認知心理学 |
ヒトの商品選択行動、マーケティング研究に関する助言・評価 |
研究課題名 |
大脳皮質FSバスケット細胞から錐体細胞への抑制シナプス支配の機能的解析 |
研究の目的 |
大脳新皮質には、基本的な単位である局所神経回路が多数存在し、それらの活動が基となって、高次脳機能が具現する事がこれまでの研究で明らかである。その回路がどのような配線構造をとるのか、どのような動作原理で機能するのか、未だ理解されるには至っていない。本研究では、その構成要素の中の抑制性シナプスの機能に関する解析を行う。具体的には、錐体細胞に対するFSバスケット細胞の抑制性シナプスの位置やそのPSDの面積と、ターゲットの錐体細胞に起きるipsc電流の大きさとの相関を注意深く詳細に解析する。そして、その解析結果を基に、シミュレーション解析を加える事で、実際に皮質の抑制性シナプス機能にどのようなメカニズムが隠されているのかを解析したい。これまで、抑制性シナプスの機能に関しては、その詳細はまだよく知られていない。本研究は、抑制性シナプスの機能的な理解を飛躍的に進めるデータを提供できる物と考えている。 |
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氏名 |
機関 |
専門分野 |
役割分担 |
研究代表者 |
窪田芳之 |
生理学研究所 |
神経科学・神経解剖学 |
組織作成・電子顕微鏡観察・データ解析及び研究の総括 |