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研究組織

公募(平成22-23年度)C01班

研究組織

公募(平成22-23年度) C01個体間相互作用(個体システム班)

K1班

研究課題名
バイオロジカルモーションの幾何学と脳内鋳型:刻印づけ手順による研究
研究の目的
バイオロジカルモーション(生物的運動BM)は、主要な関節を光点に置き換えた単純な動画から、生き生きとした人の姿が知覚されるという現象である。Johanssonによる発見以来、BMから性別・年齢・個人を特定するのみならず、感情をも読み取ることが判明した。さらに新生児もBM選好性があること、自閉症児は2歳の段階で既にBMへの選好性が弱いことが報告された。BM知覚は進化的に形成された高度に生物的な現象であるが、これまでヒト以外の動物ではBMを明確に知覚しているという根拠が得られず、脳内機構の研究も進まなかった。本研究では孵化直後のニワトリの初生雛を用いる。我々は(1)全く視覚経験を持たない雛は明確なBM選好性を示さないが、(2)刻印付け(インプリンティング)手順で視覚刺激に曝すことによって極めて強いBM選好性が発現することを見出した。この発見は、(1’)BM知覚の鋳型が生得的に備わっており、(2’)刻印付け手順は教示的な学習ではなく、BM選好性の鋳型を発現誘導する過程である、ことを示している。本研究では、(A)行動学的実験を通してBMをBMたらしめる幾何学的性質を特定し、(B)BM選好性をもたらす鋳型が存在する脳部位を特定し、(C)BM知覚の神経ダイナミックスを抽出することを、目的とする。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 松島俊也 北海道大学 行動生態学、認知脳科学 研究の立案・実施・解析・論文の執筆
連携研究者 本間光一 帝京大学 生化学、分子生物学、神経科学 脳内鋳型の分子的基盤に関する研究の実施
連携研究者 Giorgio Vallortigara トレント大学 認知科学、実験心理学 バイオロジカルモーションの知覚に関する研究の立案

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K2班

研究課題名
未知環境とのコミュニケーションによる意義情報の抽出と新たな知識の生成過程
研究の目的
ヒトや動物は未知の環境下にあっても、「環境との試行錯誤的なコミュニケーション」によって、生存するための「新しい知識」を確立することができる。例えば、初めて遭遇した未知の森で、さまざまな色の木の実を食べたとき、「赤色の実は美味しかったが、他の色の実は不味かった」という試行錯誤的な経験を繰り返せば、「赤い色→美味しい」という新しい知識を獲得し、最初から赤い木の実を探すようになるだろう。このような柔軟な適応的行動の形成は、(1)「環境との試行錯誤的なコミュニケーション(刺激情報―行動選択―結果)を繰り返すことによって意義のある刺激情報(赤い色)を見出す過程」から、(2)「明示的に新しい知識を学習したあと、試行錯誤なしに適切な行動選択を行う過程」への遷移と見なすことができる。このとき、最も知的・創造的な脳活動は、後半過程ではなく、環境との試行錯誤的なコミュニケーションを行うことによって意義情報を未知状態から既知状態に変えていく前半過程にある。本研究では「環境との試行錯誤的なコミュニケーションよって新しい知識を獲得」するときの神経メカニズムを明らかにするため、「試行錯誤を伴った視覚探索課題」を新たに開発してサルに訓練し、ルールが更新されるごとにサルが試行錯誤を行って新たな知識を学習する過程(特に前半の試行錯誤を伴う過程)で働く神経メカニズムを前頭連合野外側部で明らかにすることを目指す。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 小川 正 京都大学 神経生理学 研究計画立案と統括、動物における神経生理学的実験・データ解析
連携研究者 熊田 孝恒 産業技術総合研究所 視覚心理学 ヒトにおける心理学的実験・データ解析

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K3班

研究課題名
下垂体後葉ホルモンによるコミュニケーション促進機構
研究の目的
本研究の目的は下垂体後葉ホルモンであるバゾプレシンとオキシトシンによるコミュニケーション・社会行動を促進させる神経機構を明らかにすることである。バゾプレシン受容体遺伝子欠損動物あるいはオキシトシン受容体遺伝子欠損動物は社会行動異常を示す。逆に、バゾプレシンあるいはオキシトシンを脳室内に投与すると社会行動が促進されることが知られている。しかし、その神経機構は不明である。本研究の目的は、脳内局所への微量投与法、マイクロダイアリシス法、オキシトシン受容体遺伝子欠損動物、時間空間的に選択的にバゾプレシン産生ニューロンを破壊できる遺伝子改変動物を用い、同種間コミュニケーションを制御する下垂体後葉ホルモン作動性ニューロンを同定し、その作用部位を明らかにすることである。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 尾仲達史 自治医科大学 生理学 行動・生理実験と研究の遂行と統括
連携研究者 高柳友紀 自治医科大学 分子生物学 分子生物学的実験の遂行

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K4班

研究課題名
社会的欲求の生成と変容の脳内機構
研究の目的
物質的欲求は、物理的な外的環境との相互作用の場において行動をガイドするのに対し、社会的欲求は、対人コミュニケーションの場において行動をガイドすると考えられる。しかし、社会的欲求が脳内でどのように生成されるのかについては、ほとんど分かっていない。本研究では社会的欲求の神経機構を、物質的欲求の神経機構との比較において明らかにするため、社会的欲求と物質的欲求を制御できる課題を行っているときの脳活動を計測する。本研究では、体験学習プログラムによる自尊心向上によって、社会的欲求の脳内表現がどのように変容するのかについても明らかにする。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 松元健二 玉川大学 認知神経科学 連携研究者、研究協力者の協力を得ながら、全体を統括し、研究立案・実行・公表のすべてを担う
連携研究者 難波克己 玉川大学学術研究所 身体教育学 体験学習プログラムの実施

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K5班

研究課題名
教師である父や配偶個体を前にした小鳥の歌学習行動の変容と脳内ドーパミン濃度の変化
研究の目的
ジュウシマツのオスは、成熟すると歌をさえずるようになるが、その目的はメスを誘う配偶行動である。一方、この歌は有限状態文法の特徴をもつ(Honda & Okanoya 1999)ことも知られているが、文法は生得的ではなく、各個体が幼若期から父親の歌を学び、父の歌の持つ文法構造に近づける練習を熱心に繰り返すことで、習得されている。
哺乳類の先行研究から、記号列情報の配列学習には、大脳基底核におけるドーパミン(DA)の役割が重要であることが、また鳥類においても社会的文脈を反映した歌行動の発現にはDA系の役割が重要であることが報告されているので、中脳DA作動系は歌文法の学習と、成熟後の生成の両方に関与していると考えられる。そこで、自由行動が可能なマイクロダイアリシス法を用いて、直接歌神経核のDA濃度を連続測定し、その行動文脈、他個体(父親・メス)との関わりや、歌文法の学習との関わりを検討したい。本研究の成果は、常に社会的文脈や他個体との相互作用の中におかれているヒトの言語能力の発達の研究にも、貢献することを期待している。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 奥村 哲 静岡理工科大学 神経行動学、行動生態学、神経科学 研究全体の計画・実施・および総括

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K6班

研究課題名
他者の身体的内部状態推定に基づくシンボルと感覚運動情報の融合コミュニケーション
研究の目的
本研究では,ミラーニューロンが持つと考えられる二つの機能: 1)他者と自己の間での感覚運動情報のマッピング, 2)他者との円滑なコミュニケーションの成立,を融合した工学モデルを提案する事を目的とする.そのために,シンボルと感覚運動情報の相互変換,および,他者の運動情報の観察から感覚情報を推定するという工学的技術を用いる.コミュニケーションが成立するために必要となる条件のうち,他者の感覚の推定が果たす役割,および,シンボルと身体運動動作の二種類の表現をどのように織り交ぜれば良いのか,という条件についての知見を得る.特に,実際のヒューマノイドロボットを用いて人間との対話実験を通じて,提案手法の評価を行い,実用性を実証する.
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 稲邑哲也 国立情報学研究所 知能情報システム学 研究統括、模倣と対話による内部感覚推定の理論基盤とシステム統合

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K7班

研究課題名
マカクザル半側空間無視モデルを用いた空間および身体の認知機構の解明
研究の目的
半側空間無視とは主に右大脳半球の損傷によって引き起こされる、損傷と反対側の空間の感覚刺激(視覚、聴覚、体性感覚)に対する反応が欠如・低下する現象のことを指し、感覚障害(同名半盲など)や運動障害(片麻痺など)によっては説明できない認知的障害である。昨今の機能イメージングなどによる知見の蓄積から、半側空間無視は脳のある部分の障害というよりは、頭頂-側頭連合野と前頭連合野とのあいだでの情報伝達の機能不全であり、脳内ネットワークの病であると考えられるようになってきた。これらのことを踏まえて、本研究ではマカクザルの頭頂連合野と前頭連合野とを繋ぐ神経線維である上縦束を切断してその無視症状をさまざまな行動課題で評価することによって、半側空間無視の動物モデルを確立することを最大の目標とする。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 吉田正俊 生理学研究所 認知神経生理学 研究の統括を行なう

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K8班

研究課題名
無意識的同調行動における脳内統合過程の解明
研究の目的
社会において適応的な行動をとるためには1)他者の行動、2)他者と自己のおかれている環境、さらに3)自己の状況を統合的に認識し、さらに自身が次の行動を起こしたときにこの3つの変数がどのように変化するのかを適切に4)予測しなければならない。しかしこの4つの変数を意識的に行うには社会はあまりにも速く変化しすぎている。むしろ意識にのぼらない脳機能によってこれらが処理されていると推測することは想像に難くない。そこで本研究では「無意識的な同調行動」あるいは「動作の引き込み」に焦点を当て研究を進める。本研究のねらいは、社会的状況下にある無意識的な行動を比較認知科学、脳神経科学の俎上にあげることで、現実の社会適応行動に必要とされる、無意識的脳機能を明らかにする。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 長坂泰勇 理化学研究所 神経科学・比較認知科学 研究全般

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K9班

研究課題名
高次認知過程を伴う協調行為の生成に関するその動的メカニズムの構成論的理解
研究の目的
協調行為の生成のための動的メカニズムの理解は、複数個体間の知覚運動レベルでの相互結合に伴う相互引き込みによる説明によるものが多数を占めるが、引き込み現象だけで、トップダウンの志向性に駆動されるような人間の高次認知過程を含む協調行動のメカニズムを理解していくことは難しい。そこで提案者は、過去に行ってきたトップダウンとボトムアップの相互作用に注目して行ってきた脳型認知ロボットの実験研究を、2個体のロボットの相互作用の研究に発展させ、本問題に取り組む。その新たな実験研究を通して、あたかも自由意志をもって独立に振舞うように思われる2個体のロボットの意図及び志向性が、いかにお互い同士の予測に基づく相互作用・コミュニケーションをもって一つの共有目的のもとに揃い、その結果協調行為が開始されうるのか、その動的メカニズムを探求することが本研究の目的となる。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 谷 淳 理化学研究所  -  研究統括遂行、モデル考察
連携研究者 西本隆之介 理化学研究所  -   - 
連携研究者 並川 淳 理化学研究所  -   - 
連携研究者 有江浩明 理化学研究所  -   - 

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K10班

研究課題名
個体間コミュニケーションとしてのサルの競争行動とそれを支える脳活動
研究の目的
本研究は、2頭のサルに競争的ゲームを行わせ、一方が勝てば必ずもう一方は負け、一試合ごとに勝ち・負けが変化するような事態で、競争相手の存在やその行動がもう一頭のサルの行動やニューロン活動、神経伝達物質の動態にどのような影響を与えるのかを詳しく調べることにより、コミュニケーション行動としての競争の脳メカニズムを調べようとするものである。脳活動としては特に前頭連合野に注目し、この脳部位で競争における勝ちや負けに関係した活動が見られるかどうか、またそうした活動が見られた場合、競争がサル対サルの場合とサルがコンピューターを相手に競争する場合で、違いが見られるかどうかを調べようとするものである。さらにこうした競争に関係して前頭連合野におけるドーパミンやグGABAの変化を明らかにしようとするものである。
  氏名 機関 専門分野 役割分担
研究代表者 渡辺正孝 東京都医学総合研究所 神経科学 研究の総括とニューロン活動の記録実験
連携研究者 児玉 亨 東京都医学総合研究所 神経科学 共同して実験を行う

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